一度精密検査の指示が出て、“良性“と診断を受けた場合、ご質問のようにどのような頻度で検診を受けていけば良いのか、またどのような施設で受ければよいのか、悩まれることが多いのではないでしょうか。
実際、良性の所見がある方こそ、他の項目でもお話しましたが“検診の質”を担保できる環境を得ること、そして異常所見が出た場合に迅速に対応できる検診施設で継続していくことが重要なのではないかなと思っています。
乳癌検診を受けて、“癌の可能性が1%以上ある場合”に“要精密検査”として、精密検査ができる施設(病院やクリニックなど、乳癌学会に認定された施設)を受診するようになります。
癌を疑う場合、組織を一部切除する(針生検)を施行することもあるのですが、精密検査の段階で良性を考える場合は、ある一定期間経過観察をすることが勧められます。このある一定期間というのが正確に国内で定められていないのですが、海外では1-2年程度とされていて、この“変化がないか”を半年ごとに画像で確認するとされています。
1-2年の期間で変化がない場合“良性”であると考えられ、検診やドックにお戻りいただくようになります。その後は他の方と一緒で、1年に1度の検診・ドックの受診(保険外診療)で十分になります。
時折、検診に戻ってから、同じ部分の同じ所見に対し“要精密検査”の指示を受けてしまうことが起こります。“検診の質”が担保できていない場合、いつも認められる“異常”を、“いつも通り“と診断するのではなく、”いつも通りの異常“なので精密検査、と判断されてしまうこともあるんですね。
検診を受ける施設がバラバラだとこのような判断になってしまうことが多いです。顔に小さなホクロがついていても、”ついているから異常だ“とは言わないですよね。でも変化があったときに”皮膚がんかも?“と考えて皮膚科にかかると思います。
これと一緒で、変化がある・変化がないをしっかりと診てもらえるような施設で検診を継続することが、特に良性の所見がある方には重要だと思います。
精密検査を的確に行うことができる、そして良性の判断でも慎重に経過を見ることができる、という観点で施設を選ぶなら、乳腺専門医のいるクリニックや乳腺の専門外来があるような施設に併設もしくは連携できている人間ドックがお勧めかなと思っています。
精密検査の際の画像(保険診療)と検診・ドックの画像(保険外診療)を一元管理できるので、“いつも通り”か“いつもはなかった所見”なのかという観点での検診・ドックが可能になりますから、小さながんの発見だけでなく、不要な精密検査を避けることも可能になります。
いつか、どの医療機関でもカルテが一緒で医学的な情報がシェアされるようになればこのようなことは起こりづらくなるのでしょうが、それまでは、信頼できる検診施設で検診を継続して受けていくことが重要になのではないかなと思っています。
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[備考] 本オピニオンは、医師が経験に基づき一般的な医学的見解を述べたものに過ぎず、個別の事例についての所見を述べたものではありません。 個別の症例については、必ず医師に直接ご相談下さい。