乳腺エコー検診がまるごとわかる

乳腺エコー検診とは

マンモグラフィ検査単独では正確な診断を行うことが困難な女性の乳腺についても、全く別の方式である超音波(エコー)検査を行うことで正確に把握でき、しこりの内部の状態や広がり具合まで観察できます。

診察したい部分に化粧水とほぼ同じ成分で出来ている専用のジェルを塗って、携帯電話くらいの大きさの超音波を出す機器(プローブ)を当てるだけですので、痛みも全くありません。通常15〜20分程度で行われます。

超音波やマンモグラフィによる乳がん検診は、より精密な検査が必要かどうかを判断することが目的です。つまり、検診における超音波検査だけで乳がんと診断されることはありません。乳がんかどうかは、専門医の元で行われる精密検査として、再度超音波やマンモグラフィによる検査を行なったり、MRI検査、細胞を取って行う「細胞診」や「組織診」の病理検査を行い、総合的に判断した上で確定診断されます。

乳腺エコー検診でわかること

乳がんを疑うしこりがある場合でも、その形態は様々です。超音波検査は、以下のような病変を検出するのに長けています。

乳がんの約20%前後が非浸潤性の乳がんで、残りの大部分は浸潤性の乳がんとして、しこり(腫瘤)を作ることが多いですが、超音波検査はそのようなしこりを検出する能力が高いことを考えると、超音波検査は最も重要な乳がん検査の一つであると言えます。

乳腺エコー検診でわかりづらいこと

超音波検査も検出するのが得意なものもあれば、不得意なものもあります。例えば、しこり(腫瘤)になっていない、広範囲に広がっている非浸潤がんは、超音波画像でははっきりと映らず、石灰化を検出するのに優れたマンモグラフィの方が鮮明に撮影されます。こうしたことから、マンモグラフィでも検査することが重要とされています。

  • 非浸潤性乳管がん(DCIS)
  • びまん型浸潤性小葉がん ※「びまん」とは広範囲に広がっている様子

乳がんのステージと乳がんの種類

浸潤がんとは、増殖したがん細胞が乳管の壁を破って、周辺組織まで広がったものをいいます。この場合、検査しても見えない微小ながんが広がっていないかとか、他の部位への転移を疑う必要があります。ステージはしこりの大きさや脇(腋窩)のリンパ節への転移状況によってステージ1〜4に分類されます。

ステージ0非浸潤がんで乳管の中だけに留まる乳がん
ステージ1しこりの大きさが2cm以下で脇のリンパ節に転移していない
ステージ2Aしこりの大きさが2cm以下で、脇の下のリンパ節に転移している。
しこりは2.1〜5cmで、脇の下のリンパ節に転移がない
ステージ2Bしこりの大きさが2.1〜5cmで、脇の下のリンパ節に転移がある
ステージ3Aしこりの大きさが2cm以下でも、脇の下のリンパ節に転移があり、さらにそれがお互いに癒着していたり、周辺の組織に癒着している。または、胸骨の内側のリンパ節が腫れている
しこりの大きさが5cm以上である
ステージ3Bしこりの大きさやリンパ節転移に関係なく、しこりが胸壁に癒着している。または、しこりが皮膚に露出して皮膚が崩れたりしている
ステージ3Cしこりの大きさに関係なく、脇の下、胸骨の内側、両方のリンパ節に転移。または鎖骨の上下のリンパ節に転移している。
ステージ4乳房や脇のリンパ節以外の、肺・肝臓・骨などの臓器への転移に伴う遠隔転移がみらえる

乳腺エコー検診の重要性

浸潤がんの場合は将来的な転移再発を心配しなければなりませんが、見つかった時の腫瘤の大きさが小さければ小さいほど転移をしてしまう頻度が少なく、予後が良好となる可能性は高いのですが、小さいと発見が難しいのが現状です。

例えば、1cm以下のしこりは見つけるのも難しく、検査技師や医師のスキルや経験によって発見できる可能性にはバラツキがあります。

そのため、乳がんの好発年齢の女性は超音波検査を1年に最低1度は行うことが、早期で乳がんの発見・治療を行う上で重要だといえます。

日本人の乳がんの特徴

元来、日本人に乳がんは少ないとされていましたが年々増え、現在では女性11人に1人がかかると言われています。乳がん検診は触診とマンモグラフィを中心に行われていますが、これは欧米でのエビデンス(科学的根拠)に基づくものです。欧米では、乳がんは年齢が高くなるほど罹患者が増え、米国では70代後半から80代がそのピークとなっています。

一方、日本では、30代後半から罹患者が急増し始め、40代半ばが罹患者数のピークとなっています。30代半ばから40代になる頃には、しっかりと毎年乳がん検診を行い早期発見対策をする必要があります。

デンスブレスト(高濃度乳腺)と乳腺エコー検査

デンスブレストとは、乳房内の乳腺の割合が高い乳房で、これ自体は異常なものではありません。ただし、マンモグラフィ検査では下記の画像のように白く映ってしまうため、左図のようにしこり(腫瘤)があったとしても、白い乳房の中に白い病変を見つけることが難しくなります。

米国では、デンスブレストの場合、被験者にデンスブレストであることやマンモグラフィでの検出が難しいことを伝えることが義務化されている州も増えており、マンモグラフィ検査ではかなり診断の感度が落ちてしまうという理解が常識となりつつあります。

超音波検査はマンモグラフィとはまったく別の方法で検査するため、デンスブレストの乳房においてもしこり等を検知できるため、超音波検査を併用して行うことがより重要となります。

40歳以上の女性の4割がデンスブレスト

デンスブレストは、若年(20-40歳代)に多くみられる傾向にあります。現在までの統計によると、日本の40歳以上の女性の4割がデンスブレストにあたるといわれています。

デンスブレストは、年齢(特に閉経状態)や授乳経験とともに解消していく傾向にあります。欧米では、乳がん罹患者は高齢になるほど多いため、最も乳がんにかかりやすい高齢者がデンスブレストである可能性が低いこともあり、マンモグラフィがより有効な検査方法であるとされています。

乳がんは早期発見がカギ

どの病気でも早期発見は極めて重要なことですが、中でも乳がんは、早期発見が最も重要な病気の一つです。超音波検査やマンモグラフィ検査で発見しやすく、早期発見できれば完治する可能性が高いからです。

がんの治療を行う際に気なるのが生存率で、「5年生存率」や「10年生存率」が疾病ごとに統計があります。例えば「5年生存率」とは治療開始から5年を経った時点で生存している人の割合を指します。この中には、再発しなかった人と再発して生存している人が含まれています。また、例えば、ステージ4のがんでは、その病気の状況や治療法も人によって様々ですので、生存率は一つの参考指標となります。

乳がんの場合、ステージ1の5年生存率も10年生存率も90%以上となっています。そのため、早期発見すればかなり完治する可能性が高いといえます。

他方、ステージ3や4では、その生存率は低下してしまいます。進行すれば他の臓器への転移や再発のリスクは高まりますので、こまめな検診で早期発見をすることが、乳がんが増えている現代の日本社会では、健康で長生きを目的とする上で欠かせません。

乳腺エコー検診の課題

浸潤性の乳がんを検出するのに有用な超音波検査ですが、超音波プローブを正確に扱ったり、撮影された超音波画像を読影するのに、経験とスキルが必要な検査です。検査技師および読影・判断を行う医師の経験とスキルにより、検査精度にバラツキがあることが課題とされています。

熟練した検査技師も常に見落としの不安を抱えながら検査を行なっており、またその熟練した検査技師の人数も全国的に不足しています。今後は、こうした点がAI等の最新技術を活用することで、全国的な検査精度のバラツキが軽減されることが期待されています。

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