リンパ管侵襲ってなに?- 黒住医師のオピニオン

黒住 献 医師
[オピニオン]
国際医療福祉大学成田病院 乳腺外科学准教授

悪性腫瘍の特徴は、周囲に浸み込むように浸潤性増殖をすること、遠くの臓器や組織に転移をすることです。

このうち血行性転移とリンパ行性転移は、癌細胞が周りにあるリンパ管や血管の中に入り込み、流れに乗って運ばれた先で増殖し再び血管やリンパ管の外に出て育つことで成り立ちます。

このリンパ管や血管の中に癌細胞が入り込むことを脈管侵襲と呼びます。

浸潤性乳癌の予後を予測する因子には、腫瘤の大きさ、リンパ節転移の有無、悪性度、ホルモン受容体の有無、HER2過剰発現の有無などがありますが、この脈管侵襲も予後を予測する指標の1つとなっています。

脈管侵襲の病理学的評価では、切除された癌組織内を顕微鏡で詳細に観察し、リンパ管侵襲(Ly)と血管侵襲(V)に分けて評価します。海外では、Lymphovascular invasionとしてひとまとめに評価されることもあります。

浸潤性乳癌において、リンパ節転移は予後に関係する重要な因子です。

リンパ節転移は、癌細胞がリンパ管内に入り込み(リンパ管侵襲のことです)、そこからがん細胞がリンパ節に達することにより生じます。

乳癌においては、リンパ管侵襲の頻度が血管侵襲に比べて非常に高いとされており、リンパ管侵襲の病理学的評価をきちんと行うことが大切です。

リンパ管侵襲は、浸潤性乳癌の予後に関わるものでありますが、リンパ管侵襲がおこるメカニズムはまだはっきりと分かっていません。今後そのメカニズムが解明され、新しい治療方法が発見されることが期待されています。 

(酒井帆乃花、黒住献医師 共著)

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[備考] 本オピニオンは、医師が経験に基づき一般的な医学的見解を述べたものに過ぎず、個別の事例についての所見を述べたものではありません。 個別の症例については、必ず医師に直接ご相談下さい。

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