乳がん検診、超音波(エコー)検査はやった方がいい?- 田村医師のオピニオン

田村 宣子 医師
[オピニオン]
虎の門病院 乳腺・内分泌外科 医長

検診の質を考えることが最も重要なのではないかと考えています。

自治体が行うがん検診は、国民の死亡率を減少させる目的で行われていて、その観点から、自治体の乳がん検診は40歳以上の女性に2年に1度のマンモグラフィ検診を推奨されています。

でも、忙しい中で乳癌検診を受けるのですから、死亡率の低下だけを目的に検診を受診される方はいないのではないかなと思っています。

早期に発見することで、万が一の時でも手術で部分切除できるとか、化学療法を避けるとか、治療を小さくすることを願ってらっしゃる方が大半なのではないでしょうか。

私は、そのためには、検診を受けるときに自分に合った内容を検討し、画像を比較してもらえるような環境と整えておく、つまり検診の質を担保することが最も大切なのではないかと思っています。

これは乳癌だけでなく、どのような病気でも、どなたにとっても重要なことかなとも思います。

超音波検査が必要か?という質問ですが、それを考えるためには、実はマンモグラフィで乳癌を発見できるかどうかには個人差があるということを知る必要があるかなと思います。

マンモグラフィでは、乳腺組織や癌は白く、脂肪組織は黒く映るのですが、乳房の中の乳腺組織(白)と脂肪組織(黒)の割合は、個人差が大きく、年齢を重ねることで変わっていきます。

つまり個人差・年齢差によって乳腺の濃度が大きく異なっていて、白く映る癌の発見のしやすさが異なってしまうのです。

このように乳腺濃度が高く乳がんを発見しづらい乳房を“デンスブレスト”と呼び、マンモグラフィ単独での検診では見落としてしまう可能性があることが分かっています。

真っ青に晴れ渡った空では白い三日月を見つけやすいけれど、秋の鰯雲が散らばる白っぽい空では、白い三日月を見つけにくいですよね。秋の空と同じように乳腺濃度の高い乳房であれば、白く映る乳がんを発見づらいので、マンモグラフィ単独だと見落としのリスクを抱えてしまうのです。

実際、超音波検査を追加する方法以外だと、マンモグラフィを3Dで撮影する方法など、様々なことが研究されています。

J-STARTという東北大学が主体で行われた厚生労働省の研究では、超音波検査をマンモグラフィ検診に加えることでがんの発見率が上がったと報告されています。

早期での発見率が上がりしいては生存率が改善できる、もしくは化学療法が必要な患者さんが減るなどの明らかなメリットについては検討中です。

発見率が増えたことはインパクトがある結果だったなと感じていますが、超音波検査を加えるための費用を誰が負担するのかについては、まだまだ議論が続くと思います。

医学的な根拠はまだ確立していない中で、患者さんたちがどのような選択をしていくのかになるのですが、現段階としては、年齢だけでなく、少なくともご自身の乳房の濃度(デンシティ)や家族歴などから、ひとりひとりにとって適している乳がん検診を検討していくことが重要なのではないかなと思っています。

コストパフォーマンスも考えることは検診を考えるうえで重要で、どのような条件で検診を受けてらっしゃるかにもよるのですが、もし選択できるのであれば、マンモグラフィ単独よりは超音波検査を加えることで乳癌の発見率が上がるのは確かですし、マンモグラフィを3Dマンモグラフィに変更することで見落としのリスクは下げられる可能があると思います。

いずれにしても大事なのは、自分に適している検診がどのようなものかを知ること、そして継続して受診することで画像の比較をしてもらうことかなと思っています。

賢く検診を受けて、万が一に備えることができると素晴らしいなと思っています。

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[備考] 本オピニオンは、医師が経験に基づき一般的な医学的見解を述べたものに過ぎず、個別の事例についての所見を述べたものではありません。 個別の症例については、必ず医師に直接ご相談下さい。

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