若くして乳がんになる人はどういう人?- 林田医師のオピニオン

林田 哲 医師
[オピニオン]
慶應義塾大学病院 ブレストセンター長

いわゆる遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(HBOC)と診断される患者さんでは、20代から30代でも乳がんに罹患する確率が多いと考えられています。

HBOCは、父母から受け継いだ受精卵の遺伝子の一部に変異(最近ではバリアントと呼ぶこともあります)が存在することにより起こる疾患で、BRCA1もしくはBRCA2遺伝子の機能が低下もしくは欠損することで、乳がんもしくは卵巣がんの発症頻度が著明に増加してしまう状態にあります。この場合は若くして乳がんに罹患することがあります。

BRCA1/2の機能異常がない場合も、若年性乳がんの患者さんには親族に既往歴があるケースが多いと考えますが、この場合はBRCA1/2ではない他の遺伝子に機能異常が存在することが、近年明らかになってきています。

現在は、原因遺伝子と考えられる複数の遺伝子を一括して血液検査で調べることができるようになってきておりますので、ご親族に乳がん患者が多い場合は、このような検査を受けることを検討してもよいかもしれません。ただし、現在は公的な健康保険は使用できないため、自費診療で検査を受けることになります。その際は、しっかりとした遺伝カウンセリングを受けてから検査を行うことが重要です。

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[備考] 本オピニオンは、医師が経験に基づき一般的な医学的見解を述べたものに過ぎず、個別の事例についての所見を述べたものではありません。 個別の症例については、必ず医師に直接ご相談下さい。

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