乳がん検診でMRIはした方がいい?- 林田医師のオピニオン

林田 哲 医師
[オピニオン]
慶應義塾大学病院 ブレストセンター長

乳がん検診は乳房に特別な症状がなくても定期的に受診すべきですが、そのようなケースでMRIが有用かどうかについては、医学的なエビデンスはありません。また、後に述べるデメリット。特にコスト面とのバランスが悪く、自治体などが行う対策型乳がん検診の現場で使用されることはまずないと考えます。

MRIを行う際のデメリットは、まず検査に1回あたり30分程度かかってしまうこと。乳房の検査の場合は造影剤を必ず使わなくてはいけないので、喘息といったアレルギー症状を持つ方には使用が不可能であるということ。生理周期から、撮影のタイミングを検討しなければならないこと。検査にかかる費用が高額であるということです。

自治体などが行う検診は、決められた予算内で迅速かつ安全に多くの方の検査を行わなければなりませんので、上記のデメリットから、乳房MRIが検診で採用されることはないと考えます。

純粋に医学的な有用性という点では、造影MRI検査はとても感度が高い検査であるため、要精密検査と判断された方に対しては極めて有用な検査手段ですし、前述のデメリットを度外視すれば、乳がんの早期発見に貢献すると個人的には考えています。例えば、遺伝性乳がん・卵巣がん症候群と診断され、罹患率が極めて高いと考えられている患者さんの間では、症状がなくても造影MRI検査を定期的に撮影することが有用であると考えられています。

乳房MRI検査は、生理周期を考慮して検査のタイミングを図るなど、適切に使用しなければなりません。そのため経験を有する専門医のもとで、コストを度外視して行えば、有用なスクリーニング手段になり得る可能性を秘めていると考えます。

人間ドックなどの任意型検診は自費で行うものなので、どこまでの検査を行うか決めなければいけませんが、自身の心配の度合いや検診の頻度、ご家族の既往歴などを考慮して、納得いく範囲で決めていくのがいいでしょう。

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[備考] 本オピニオンは、医師が経験に基づき一般的な医学的見解を述べたものに過ぎず、個別の事例についての所見を述べたものではありません。 個別の症例については、必ず医師に直接ご相談下さい。

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