乳がん検診の結果で乳がんの可能性が高いのはどういうの?- 林田医師のオピニオン

林田 哲 医師
[オピニオン]
慶應義塾大学病院 ブレストセンター長

乳がんの確定診断は精密検査をしないとわかりませんので、乳がん検診というのは、この精密検査が必要かどうかを判断することを目的にしています。

検診ではしこりがあるなど、何らかの病変がある場合、その形態などからカテゴリー分類を行い、そのカテゴリーに属する病変が統計的にどのくらいがんである確率があるかということを踏まえ、最終的に医師が要精密検査か否かを判断していきます。余談ですが、このカテゴリー分類を乳がんのステージ分類と勘違いされる方が多いのですが、全く異なるものです。

例えばマンモグラフィでは、撮像された腫瘍の形態や、石灰化の分布からカテゴリー分類を行います、カテゴリー1と2は異常ないか、良性で確定。

一般的にはカテゴリー3以上と判定されると要精密検査となりますが、現在までの統計データから、カテゴリー3は5−10%の確率で乳がんの可能性があると考えられています。

カテゴリー4と診断されると、施設にもよりますが30-40%の確率で乳がんが存在し、カテゴリー5の診断では80%以上の確率で乳がんの診断となることが知られているので、カテゴリー4以上と判別される場合は、専門医もかなり乳がんの可能性を疑って、精密検査に臨むのが一般的です。

マンモグラフィ検診のカテゴリー分類

カテゴリー分類検査結果の説明
カテゴリー1異常なし異常ありません
カテゴリー2良性石灰化した繊維腺腫や、脂肪腫による影響等、明らかに良性と判定できる所見
カテゴリー3良性
しかし悪性を否定できず
良性の可能性が高いが、悪性も否定できない所見
超音波検査等の追加検査が必要
カテゴリー4悪性の疑い悪性の疑いがあり、他の詳しい検査が必要
カテゴリー5悪性ほぼ乳がんと考えられる病変があり、更なる検査が必要

超音波検査(エコー)の場合も、同様にカテゴリー分類があります。BI-RADS分類と呼ばれる国際的な要精密検査のカテゴリー分類では、マンモグラフィーと同様にカテゴリー1からカテゴリー5までに判定されます。

カテゴリー3以上が要精密検査となりますが、現在までの統計データから、カテゴリー3と判断された場合は乳がんである可能性が2%以下であると考えられているため、経過観察となる場合も多くあります。

カテゴリー4以上は、乳がんと診断される可能性も高くなりますので、精密検査が必須であると判断します。

超音波検査の国際的なカテゴリー分類(BI-RADS)

カテゴリー判定次の取扱いがんの可能性
カテゴリー1陰性通常検診通常0%の悪性の可能性
カテゴリー2良性通常検診通常0%の悪性の可能性
カテゴリー3おそらく良性短い期間(6ヶ月)に一度の経過観察2%以下の悪性の可能性
カテゴリー4悪性疑い組織診断2%より大きく95%未満
カテゴリー5ほぼ悪性組織診断95%以上悪性の可能性

このように、乳がん検診で要精密検査と判定されても、精密検査の結果、最終的に乳がんではない(偽陽性)と判断されるケースがとても多いことを認識して過度な恐れを抱かず、しっかりと適切な受診を行うのが大切なことです。

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[備考] 本オピニオンは、医師が経験に基づき一般的な医学的見解を述べたものに過ぎず、個別の事例についての所見を述べたものではありません。 個別の症例については、必ず医師に直接ご相談下さい。

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