非常に稀なケースを除いて、一度良性腫瘍と診断されたものががんへ変化することはないと考えられています。
比較的若い女性に多く認められる良性腫瘍の代表的なものが線維腺腫ですが、時間経過とともにがん化することはありません。しかし、線維腺腫は葉状腫瘍と呼ばれる腫瘍と、画像および顕微鏡所見で似通っていることが多く、その鑑別が問題になることがあります。葉状腫瘍自体がとても珍しい疾患ですが、その数%に境界悪性および悪性が存在します。悪性葉状腫瘍はがんではありませんが、とても転移しやすく、命に関わる非常に怖い病気です。
葉状腫瘍の特徴は極めて急速な増大を見せることです。しかし、線維腺腫が葉状腫瘍に変化することはありませんので、数ヶ月の経過観察で増大を認めない線維腺腫は安心して良いでしょう。
一方、乳管の中に腫瘍が存在して拡張する乳管内乳頭腫や嚢胞内乳頭腫は、初期の乳がんとの鑑別が重要になります。こちらは画像診断や針生検で良性と判断されても、一定期間経過観察を行うことが推奨されます。ただし、経過をみていくことで乳管内乳頭腫ががん化するのか、はじめから初期のがんが混じっていて、それが増大してくるのかを区別するのはとても難しいです。
専門医が大丈夫と判断するまで、経過観察をしていただくのがよいと考えます。
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[備考] 本オピニオンは、医師が経験に基づき一般的な医学的見解を述べたものに過ぎず、個別の事例についての所見を述べたものではありません。 個別の症例については、必ず医師に直接ご相談下さい。