乳がんには、比較的おとなしいものから、増殖が活発なものまで、様々なタイプがあり、再発のリスクが異なります。乳がんの治療ではそれぞれのタイプに応じて、必要な患者さんに適切な治療を実施し、不要な苦痛を与えないようにするために効果的な治療法を行うことが推奨されています。
乳がんのタイプはもともとは「遺伝子発現」の違いをもとに分類されたものですが、これを簡略化して臨床の現場で頻用できるように、現在ではホルモン受容体やHER2が陽性か陰性か、がん細胞の増殖能力が高いかどうかによって、それぞれのサブタイプに分類し、治療方針が決められています。
ホルモン受容体陽性は総じてLuminal(ルミナール)と呼ばれ、乳がん全体の60〜70%程度を占める最も多いタイプです。
このサブタイプは、ホルモン受容体とHER2のどちらも陽性であるため、ホルモン療法と抗HER2療法ともに効果が期待できます。また、抗HER2療法を行う場合には、化学療法を併用することが推奨されています。
ホルモン受容体陰性で、HER2陽性の乳がんは、乳がん全体の10%程度をあります。ホルモン受容体がないため、ホルモン療法の効果は期待できません。抗HER2療法と化学療法の併用が通常推奨されています。
ホルモン受容体とHER2タンパクの両方とも持たない「トリプルネガティブ」と呼ばれているサブタイプです。
通常、化学療法を行います。近年では、PD-L1陽性のトリプルネガティブ乳がんに対しては「免疫チェックポイント阻害薬」による治療法があります。PD-L1は、がん細胞に発現し、免疫細胞に発現している免疫チェックポイント分子と結合して、がん細胞が攻撃されないように働く物質です。